
アルクマール/オランダ
旅のオマケ(2003.6.03)

オランダ・ベルギー・ルクセンブルク
Holand Belgium Luxembourg
〜ベネルクスをクルマで回ってみれば〜
オランダ編
その8.アルクマールのチーズ市
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2002年6月27日、オランダに入って4日目、レンタカーでオランダ中部のゴーダ、デルフトを回った私たちは、今度はオランダ北部のアルクマール(Alkmaar)に向かった。自動車道路のA13号線からA4号線に入って再びアムステルダム方面に戻り、やがてA9号線を北上する――。
●しばし、オランダ・ドライビングを
デルフトの有料駐車場を出たのは午後2時30分ごろだった。
ゴーダ、デルフトで親しんだレンガ造りの家々はとうに車窓から消え、右にも左にも牧場が流れていく。
馬、牛、草、草、そして平坦な地平線。
クルマが少ないので、カメラマンのF氏は銀色のオペルを時速100kmで飛ばす。
ところが景色が一様なため、速度を出してる感じがしない。途中で少し景色が変わったかもしれないが、脳裏に記憶なし。メモには、その後A9号線で再び広い牧場地帯に入ったと記されているから、同じような景色の中を延々と2時間近く走ったことになる。
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| 広場の脇を流れる運河。白いのは跳ね橋 |
午後4時半、チーズ市の町、アルクマールに到着した。宿泊施設を探し歩いて、5時半にベッドを無事ゲット。それ以降の話は与太話に回すことにして。
●チーズ市第2弾は、MC付き!
アルクマールも、ゴーダ(その6参照)と同じく、シーズン限定のチーズ市が開かれる町だ。
オランダは言わずと知れたチーズの産地。ゴーダ、エダム、レイデン、レーアダム、アーネムなど、有名どころがたくさんある。日本ではゴーダとエダムが有名か。前者のチーズは丸い円盤状、後者のそれは赤いワックスを塗ったやや球体に近い形で、レイデン・チーズは食パンのように四角柱をしている。
さて、チーズの特産地があれば、チーズを売りさばく市場も必要だ。オランダ中部、北部には、ゴーダ、エダム、アルクマールと、3つも有名なシーズン限定チーズ市がある。ただし、エダムの開催は7月からで我々の旅程に合わず。アルクマールは4月から9月初めの毎金曜日、午前10時〜12時開催なので、スケジュールの都合がつく。かくして取材旅程にぐりぐり組み込んだのでありました。
到着翌朝、朝食後、チーズ市が行われる計量所前のヴァーフ広場の近くまでクルマで行く。
前日、夕食前に下見がてら歩いたときは、広場に複数のカフェのテーブルや椅子がめいっぱい出ていた。
すぐ脇を運河が流れている上、パラソルがカラフルだし、椅子やテ−ブルのパイプの銀色が夕陽に輝いていたせいか、華やかな雰囲気があり、まるで川辺のリゾートって感じだった。
しかし今やその影も形もない。広場はフェンスで囲われ、フェンス内の石畳にチーズが整然と並べられている。
ここのチーズ市では、ゴーダとエダムのチーズが扱われているそうだが、私の見たときは円盤型のゴーダが多かった。
チーズ市の広場は狭く、フェンスの周りにはすでに観光客が押せ押せ状態になっていた。
やばい。これじゃ、取材(見学)ができないじゃないか。
近くのベンチに上ってみる。が、視界は知れたもの。何せ、こちらの人たちは、皆さん身長がおありで。
その上、雨まで降ってきて、ますます視界は悪くなるばかり。
木にでもよじ登るしかないか――と、ベンチの上から辺りをきょろきょろ物色していると、60代後半だろうか、オランダ人のご夫婦が、私に笑顔を向けて手招きした。 自分の前に一人分のスペースを作り、私にそこへ入れと言うのである。
いくら取材でも、一般観光客を押しのけるなんて、あんまり厚かましすぎるよなあ。
でも、あちらはしきりと手招きする。
それで好意に甘えて前に入れてもらい、お礼を述べたら、どこの国の方ですかと奥さんが聞いてきた。
私は「日本からです」。
するとご主人がさも納得げに「ヤーパン、ヤーパン」と頷いた。体格のよい奥さんが、「主人は、日本に行ったことがあるんですよ」と嬉しげな顔で説明をしてくれ、それに続けてご主人が「カマタ」だったかどこだったか、とにかく滞在したことのある地名をいくつか挙げてみせた。そうか、あの手招き、このスペース提供は、日本への親近感のなせるご利益だったか。
9時50分ごろ、白衣の男性が黒板に何か書き込み、チーズの前に立った。次に背広の男たちが5人やって来くる。
10時2分前、計量所のカリヨンの鐘が鳴る(この町はカリヨンも名物)。
女性の声がマイクごしに聞こえてきた。アルクマールのチーズ市でも、ゴーダ同様、チーズ売りの市がたつだけでなく、昔ながらのセリ売りが行われているが、ここでは観光客向けに英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語で市の進行を説明してくれる。司会者がちゃんといるのである。さらには、民族衣装のチーズ娘が籠にパンフレットをいっぱい詰め込んで、花売りよろしく観光客に売りに来る。サービスも商売もお上手なのだ。
●アルクマールのチーズ市とその歴史
そのパンフレットによれば、チーズ・キャリアーの組合(guilde)がチーズ市の運営の要になっているらしい。まずチーズ・ゼッターと呼ばれる働き手が計3万キロものチーズの玉を広場に並べ、次に検量人がチーズの重さを正確に計量する。この「正確な計量」というのが組合のこだわりであり誇りだ。
一方、チーズの検査係と買い手たちは、品質チェックを厳密に行う。
見た目のよさは絶対不可欠の要素とか。
さらに検査係がチーズからサンプルを一すくいほど取り出し、味、香りなどを調べる。
買い手も自分たちで品質を確認する。熟練した買い手だと、サンプルを親指と人差し指で潰す感触で、乳脂肪分の含有量、水分が適切かどうかなどを査定できてしまうという。
買い手が品質に納得すると、手を叩いて取引開始。
そこから交渉が始まり、最後に手を叩いて取引終了となる。
ここでいよいよチーズ・キャリアー登場だ。チーズ・キャリアーはチーズ運搬人のこと。買い手の決まったチーズは、彼らが二人してゴンドラのようなものに積み、えっちらおっちら馬車へと運ぶのである。
このパフォーマンスが江戸時代の籠かきを思い出させておもしろい。
もっとも、彼らは籠かきとは似ても似つかぬ、白いユニフォームに麦わら帽という格好。
その麦わら帽も、リボンのしっぽが長いせいか、ベニスのゴンドラの漕ぎ手を彷彿させる。
このリボンは赤、黄色、緑などあって、運搬人たちの使う“籠”の色と同じだ。
そしてキャリアーが所属する倉庫会社(warehouse company)の色と一致するそうである。
チーズ市の組合が町の記録に最初に登場したのは、1619年。
それに遡ること数100年前にはすでにチーズ・キャリーたちが職業グループをつくっており、中世にはチーズ市での彼らの役割はすでに定着していたと見られている。
チーズの業界は17世紀前半にはかなりの活況を呈していた。そこでアルクマールでは1622年にそれまで明文化されていなかったチーズ組合の規則などを制定した。当時、28名のキャリアーがいたという。
せっかくだからさらにパンフレットの説明を読み進むと、組合に入りたい者はどうすればいいかも書いてある。
組合に入って2年間は臨時雇いの立場。それを終えるとvast manと呼ばれる肩書をもらえる。経験をつんだチーズ・キャリアーを指す名称だ。なんだか、テレビ番組の「ウルルン滞在記」で使えそうなネタである(誰かトライしてみませんか、あの“籠かき”。ぎっくり腰になりそうだけど)。
各倉庫会社には上級チーズ・キャリアーが必ず1人いる。黒い皮のバッグを持っているのが特徴で、それゆえtasman(tasはオランダ語でバッグのこと)と呼ばれる。倉庫会社には親方もいて、チーズ市の始まる日は朝7時に出勤。キャリアーの出欠を取る。
アルクマールのチーズ市は、ゴーダより規模は小さいが、はるかに観光イベント化している。
狭い場所での進行だし、司会役が順番に説明してくれるので、取引の過程全体を把握しやすい。
説明も含めて30分程度で”ショー”は終わリ、見学時間としても手ごろだ。フォトジェニックでもある。
ただし混んでいると、背の低い人は他人の背中を見るはめになる。その点ではゴーダのほうが見学しやすい。
広場の運河沿いにはテントがいくつか出ており、ほとんどがチーズの売店だ。
これもゴーダ同様、三角に切ったものだけでなく、小玉ちゃんがたくさん並ぶ。
プレーンなもの、ハーブ、胡椒やパプリカをミックスしたものなど様々。
試食も、もちろんできる。
他にはその場でつくる焼き菓子の屋台が一つ二つ出ており、雨が降って寒かったせいか、粉砂糖をかけた焼き菓子に大人まで群がっていた(美味しそうでしたよ)。
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| こちら青組。走って運びます | 試食をすすめる民族衣装の売り子さん |
《与太よた話》
●また、宿の話
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| 路上の花売り。1束の量が多く安いです |
アルクマールに着いた私たちは、まず繁華な通りに行き、通り沿いのホテルを目指した。
路上の”花売り君”に場所を教わってたどり着いたそのホテルは、1階のバーが受付も兼ねている。小さい宿だが、ロケーションは絶好だ。今日は珍しく早いうちに目的地に着いたことだし、夕食前にこの辺ぶらつくのも悪くないなあ。なーんて期待を抱いてバーテンダーに声をかけたのだが、夢は瞬く間に弾けて飛んだ。
――部屋? 満室だよ!
ガクッ。まあ、明日がチーズ市じゃしかたないか。
余談ながら、この繁華街は平行した2つの通り、LangestraatとHeul Laat、さらにその間を結ぶ横丁に、デパートやスーパー、ファッション店、食べ物屋などが集まっていて、庶民的な賑わいがある。ホテルを探していたら、幸運にも酒屋を見っけ。ナイトキャップ用のビールを買い込んだのだった(しかも、ダースで買うと安い!)。
ところで、さっきのバー兼ホテル受付で最寄の他ホテルの有無を尋ねると、ないよって返事。
しかたなく、ガイドブックに載っていた最後の頼みの綱、駅前のHotel Restaurant Stad en Landに向かった。
1階はイギリスのパブみたいなつくりの店だった。中に入り、カウンター内の青年に、部屋は空いているかと声をかける。最初、相手は困ったような表情をした。まさか、ここも、もう満室なのだろうか。
すると彼がカウンター越しに近づいてきて、声をひそめて、「部屋、あります」。
なーんだ、あるんだったら、そんな陰気な顔しないでよ。びっくりするじゃないですか。
部屋代は朝食つきで一人65ユーロ。すぐに二部屋頼んだ。
青年が鍵を二つ持ってきて、一緒に外に出る。
客室の玄関はその店の裏手にあった。しかも外装工事中。鉄パイプの足場が張り巡らされている。
私がビックリしていると、かの青年、建物が工事中なので、あまりおおっぴらに部屋を貸していると言えなかったのだと、ここでもひそひそ声で説明してくれた。そういや、カウンターにはビールを飲んでるお客さんがいたっけ。
このホテルもホテルというより宿屋である。私の部屋は1階で、玄関を入ってすぐ左。窓の外は鉄パイプの景色だ。トイレとシャワー付きなのはありがたい。エレベーターはなく、幅の狭い急な階段が上に向かって続いている。普請といい、部屋といい、ロンドンの安フラットを思い出させた。
でも、朝食はまずまずイケました。
例の1階のレストランの右の奥に、前日はなかったビュッフェ・コーナーができていて、スペースは小さいが、パン数種(私の好きな蒸パン風ケーキもある)、スライスチーズ数種と銀紙に包んだ三角チーズ、冷静肉数種、ゆで卵、果物、ミルク、ヨーグルト、ジュース、コーヒー、紅茶が並んでいる。オランダは食事が質素だと言われるが、朝食のこのバラエティからすると、そうは思えない。
食べながら店内をちらちら観察していると、朝食をとりに入って来たカップルが、カウンターのところでしばし立ち止てしまった。
と、青年がカウンターから出てきて声をかけた。
ドイツ人の方ですか? でしたら、ドイツのパンもありますよ。
そして、小さいビュッフェのアイテムをドイツ語らしき言葉で説明し始めた。
そうか。ビュッフェのメニューが豊富なのは、ヨーロッパ各国から旅行者が集まるためか。
ヨーロッパと一口に言っても、国によって朝食に食べるパンの種類も飲み物も異なる。なるべく多くの国の旅行者に対応できるようにとの気配りなのか。
そんなの、どこの国のホテルでもやってるじゃないって?
いやあ、そうとも限りませんよ。とくにリーズナブルな価格設定の小ホテルだと、一見揃っているように見えて、実はメニューが偏っている場合が少なくない。それにベルギー、ルクセンブルクでは、食習慣が違うのだろう、パンとチーズかハム程度で、ここまでごっそり出なかったしね。
もっとも、最後に泊まったアムステルダムの宿の朝食はバラエティがやや乏しかったから、朝食の大盤振る舞いは、オランダでも地方都市ならではの特別サービスなのかも。
参考までに
Hotel Restaurant Stad en Land
住所:Stationsweg 92-94、1815 CE Alkmaar
TEL:072-512-3911
FAX:072-511-8440
朝食つきでシングル1人65ユーロ
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| 1階のレストランから見た駅前のバス乗り場 | 簡素だけど清潔な客室 |
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